惡の華の考察(感想)について

アニメの悪の華がとても面白くて、もう我慢できないって感じなので、この作品に対する自分の考え方をまとめてみたいと思います。ネタバレ全開でございます。






 原作は2巻発売時点からコミックを買い始め、今も買い続けています。買い始めた当時は、なんという作品だ…この後どうなっちゃうのか読めない…というドキドキ感があったのを覚えています。 この作品は最近アニメ化されて、この記事の時点では4話まで放映されてますが、いやー面白いですね。漫画をそのまま映像化してたのであれば、ここまではまらなかったと思います。その後の展開を知っているのにもかかわらず、ドキドキニヤニヤしながら見ることができてるのは、表現手法を大きく変えたからなのは明らかで、同じ展開で同じセリフなのに全く違う作品を見ている気持ちになれます。これってすごいお得だと思います。記憶をなくすことはできないわけですから。


 この作品のテーマは「思春期」で間違いないと思います。ただ、余所の感想を見ていると、仲村さんや春日君の変態行為に、本能的ななんちゃらみたいに難しく考えている人が多いようです。自分は、もっともっとシンプルで、要は「好き・嫌い」なんだと思っています。もうちょっと具体的に書きます。

仲村さん

 仲村さんは数々の暴言を放ち、脅しをかけつつ、春日君に変態行為を強要する変人ですが、彼女の行動原理は「春日君が好き」の一言ですべて説明がつくと考えます。
 彼女は典型的なMeタイプ※「ttp://marinalove.seesaa.net/category/5283420-1.html」の価値観を持っていて、自分もそうだからすごいわかるんですが、一人でいてもあまり苦にならないので、他人に暴言を吐いても一向に構わないというか、むしろ暴言を吐いて遠ざけてしまった方が楽なんですね。ただ、それが原因で差別されたりするとめんどくさいので黙ってるって感じです。人が群れて、気を使いあい、腹の探り合いをしながら、ニコニコ建前を並べる行為に吐き気をもよおすのでしょう。すごいわかります。ちょっと極端なのかもしれないですけどね。


 春日君が体操服を盗む行為を目撃したのは偶然かもしれないけど、その後脅しをかけたり、河原で毎日話をしたりなんてのは、嫌いな相手には絶対やりません。つまり興味があり仲良くなりたいのです。数々の春日君に対する変態行為の強要は、春日君に対するアプローチに他なりません。何もしなければ、春日君が自分に振り向いてくれることは絶対なく、彼女はそれをよく理解しているからです。「春日君は変態だ」というセリフは「私のことを見て」ということになります。
 ただ、彼女は「春日君がスキ」とか自分からは絶対言わないし、指摘されても認めないでしょう。彼女の中で春日君は「自分が認めた変態仲間」という定義なのです。
 

春日君

 とってもシャイで素直な思春期ボーイですね。自分はこの漫画を「仲村VS佐伯に思春期全開の春日が巻き込まれるギャグ漫画」だと思っているので、彼の行動一つ一つが非常にニヤニヤさせてくれます。
 物語中盤になると春日君は仲村さんの気を引こうとアプローチを始めます。その方法は仲村さんと同じで「僕と君は同じ変態だろ」という切り口です。これってすごい動物的だと思いませんか?クジャクが羽を広げたり、シカが角を、ライオンが鬣をアピールするのは雌の気を引くためですが、彼は「僕は変態です」とアピールするわけです。巣まで作って。その行為の根拠にあるのは、かつて仲村さんが自分にしてきた行為の意趣返しです。お互い本能的に「好きです」と(変態行為を通じて)伝え合っているんです。なんて動物的で本能的で気持ち悪いやり取りなんだと思うわけですが、これぞ思春期なんだと。そういうことではないでしょうか。

佐伯さん

 自分は仲村さん側からの視点しか持ち合わせておらず、彼女の行動について確信を持って言えることはないんですが、それでも自信を持って言えることがあります。それは「佐伯さんは仲村さんが嫌い」ということです。それはもう生理的に本能的にというレベルで。
 彼女は典型的なWeタイプ※「ttp://marinalove.seesaa.net/category/5283420-1.html」でMeタイプである仲村さんとは決して理解しえない価値観の相違があります。これは憶測になりますが、佐伯さんは「春日君が好き」という定義づけをしているだけで、本当は春日君をそこまで好きというわけではなく(好きなんだとは思いますがそれが原因で行動を起こしているわけではない)、本当のところは「春日君を仲村さんから奪いたい」のだと思います。そう考えるとつじつまがあう点がたくさんあります。


 佐伯さんは一度、仲村さん経由で春日君に呼び出されたことがあります。また、その後給食費の件で仲村さんを春日君がかばうのを見て「春日と仲村の間になにかある」とクラスの全員が気づきます。当然佐伯さんも。それを受けた佐伯さんは、2人きりの時、春日君に「かっこよかった」と言い、翌日クラス全員の前で声をかけるということを行います。これはどういうことか…
 佐伯さんの声掛けには、クラス全員に対する「春日を仲間外れにするのはやめろ」というメッセージが込められています。同時に春日君に対する恩売りも行われており、しかも、事前に春日君を励ますという徹底ぶり。まるで女神様ではないですか…ところで、この行為は春日君の為に行われたものでしょうか。そりゃあそうだろうと思われるかもしれないですが、ホントにそれだけでしょうか。自分には「完全正義に身を包んだ佐伯さんによる仲村さんに対する宣戦布告」に映ります。言い換えるなら「春日君と仲村さんが仲良いみたいだから私も春日君と仲良くするね」ですかね。周到に春日君の気を引くための手を打ってきます。佐伯さんが春日君におはようと言った時の仲村さんの顔はすごかったですね。

 放課後、階段付近で佐伯さんと春日君が密着しデートの約束をするという展開があり、そこを仲村さんに目撃されます。その時の佐伯さんの表情も強烈です。

 そしてそれを受けた仲村さんの表情も。

「あーーーーっそう・・・ふーんそういうことねー」というセリフが聞こえてきそうな。少しショックに感じていつつもそれを隠しているような、取り繕ったいい表情。


 仲村さんサイドから見てみると、別に饅頭どもにやじられようとめんどくさいだけなのに、どういうわけか、一見、全力でかばってくる奴がいて、しかも春日君との間に入ってくる。極めつけは春日君の気を引こうとしている…となります。
 この後、佐伯さんの提案で一緒に机を並べて昼ご飯を食べるというイベントがありますが、仲村さんからすれば地獄でしょう。傍から見たらやさしい佐伯さんが仲村さんに心を開いてあげている構図。しかし、仲村さんからすればうっとうしくてしょうがない。もうやめろとブチ切れたら、それを起点に春日君との距離も離れてしまいかねない展開。そしてこの展開を、無意識に、そして打算的に行っているのが佐伯さんである、というのが自分の考えです。
 4話冒頭のやり取りですでに、佐伯VS仲村は始まっていて、アニメでは露骨に表情に出ている気がします。今後、仲村さんのやりようのない怒りは、夜の学校で春日君にぶつけられます。スキだの嫌いだのめんどくさいんだよおおおおおおおおおおお的な。うんわかる。 

 ところで、佐伯さん本人は間接的に仲村さんを攻撃していることに気付いているわけでは無く、無意識の、ほんと奥底に、分厚い皮に包んでその汚い感情を仕舞い込んでいるのだと思います。それこそ本能的に正解を選んでいる…って感じで。しかし、その感情は、物語後半になって皮ごと嫉妬の炎で燃えて溢れ出してきます。仲村さんに春日君を奪われた形になり、2人がこそこそと変態行為を行っているのを目の当たりにし、それが求愛行為に他ならないことを知っているからこそ、嫉妬の炎がメラメラと燃え上がります。警察に言わないのは、警察の介入によって変態行為がストップしても根本的な解決にならないからです。すなわち仲村さんと春日君の間を引き裂くことが佐伯さんの目的ということです。


親友の木下さんはそこをストレートに指摘してしまい逆鱗に触れます。「単に仲村にとられたから悔しいだけのくせに!」「何がわかるん!!!!」
ヒャアアァァァァァァ


あの顔、アニメでどう表現されるんでしょう…ゴクリ

 
 単に振られただけなら落ち込むのではないでしょうか。ここまで攻撃的になるのは「初めて膨らんだ嫉妬を抑えられない」というのもあるかもしれませんが、やはり「仲村さんにとられた」というエッセンスが大きいと思います。佐伯さんは仲村さんにとられたというのが死ぬほど悔しいのでしょう。認めることのできない存在に出し抜かれることほど、許しがたいことはないですから。
 この後佐伯さんは、春日君を奪うという建前すらどっか行って、露骨な仲村さんへの攻撃を行います。春日君への逆レイプですね。これはもう仲村さんが一番ダメージを食らう選択肢を選んだということしか考えられません。



つづくかも