「THE LAST OF US PART 2」の感想について

心をえぐられるすさまじい経験を経て、

 エリーは復讐のために再び旅立つ。

  その行いがもたらす恐るべき連鎖に

   心と体を揺さぶられながら。

    ーーーーこの旅を見届けろ。

 

 ラストオブアスの続編が出ると聞いたとき、自分は正直不安でした。自分が今までプレイしたゲームでトップレベルの感動をもたらしてくれたゲームの続編・・・本当に作っても大丈夫かと。しかし、その不安は良くも悪くも完全に裏切られました。想像を超えてくる衝撃にぶっ飛びそうになりました。

 上のテーマは大げさでもなんでもなく、本当にその通りでした。クリアして1か月たったわけですが、いまだに頭から離れません。30後半になってまさかこんな思いをすることになるとは。ラストオブアス2は良くも悪くも歴史に残る作品ということで間違いないでしょう・・・

 これからネタバレありの感想を書こうと思います。

 ◆話の流れとプレイヤー(僕)の気持ち

衝撃の連続

 ジョエルがいきなり死にます。正直驚きましたが、覚悟はしていました。前回が前回だったので何が起きても仕方ないという覚悟はありました。でも、ボコボコにされたジョエルと、エリーの悲痛な叫びは夢に出てくるレベルでした。その後の展開はとにかく衝撃の連続で、マンネリは一切なく、内心悲鳴を上げ続けながらのプレイでした。

エリーの迷い

 エリーは復讐の旅に出るわけですが、プレイヤーとしては当然エリーよりで、アンチアビーなわけです。ところが実際復讐を始めてみると話が変わってきます。

 エリーには迷いがあります。最初は全員殺すと言っていたけど、情報を吐くなら生かすに変わり、情報をはかせようとするもすべて失敗し、結果的に関係者は惨殺です。道中では拷問してでも情報を吐かせるといっていたけど、本当に拷問することになったら苦悶の表情を浮かべ、実施後は震えが止まらない状態に。妊婦を殺したことがわかるや否や気を失いかけます。最も、19の少女がいきなりすまし顔でこれらを行ったら逆に驚きますが・・・

 やはり根っこにある動機が復讐ではこうなるのだなと思いました。前作でのエリーを守ろうとするジョエルが鉄の意志なら、エリーはいつ破けるかわからない薄皮の意志という感じ。すごくリアルだなと思いました。

 また、エリーの行動の結果が重すぎるというのがありました。浅はかな行動の結果必要以上に悲劇を広げすぎていて、他ならぬエリー自身が追い込まれていくように見えました。

「プレイする映画」の続編は「プレイさせられる映画」だった

 こんな展開なので、僕は終始やりたくないプレイをやらされている感覚に陥っていました。嫌な予感しかしないし、プレイしていてつらい。コントローラーを置きたい。でも続きが気になる…

 やりたくないことをやっている感覚・・・おそらくエリーも同じ気持ちだったのではないでしょうか。エリーは復讐すると息巻いていたけど、腹の底ではそんなことしたくないと思っている・・・もしそうなら、ある意味、正しく感情移入できていたといえなくもないですね。

 アビー

 中盤以降はやらされている感覚に拍車がかかりました。アビーを操作させられたからです。アビーの人生はなかなか壮絶でした。父や仲間をジョエルに殺され、復讐に魅せられてオーウェンと結ばれずメルに奪われ、復讐を無事果たした後には、文字通りの悪夢と、エリーとトミーに仲間を皆殺しにされる未来が待っています。出てくるキャラがことごとく死の宣告を受けている。しかも殺したのはエリー(自分)というのは否応なく考えさせられるデザインだなと思いました。

 その後の展開も壮絶で、セラファイトの姉妹に助けられたのをきっかけにその子らを守るようになり、苦労して助けたヤーラもあっさり死に、レブを守るためにWLFと対立して、かつての仲間と戦闘になり、何もかも失った上にすべての組織から追われることになります。復讐を果たしても救われることはなく、地獄のような展開になるのを見せつけられます。

 憎いアビーがどんどん不幸になっていくのに、ちっとも気が晴れません。これは一体どういうことか。アビーに感情移入しているということなのか、エリーの行動に対しての疑問が大きくなっているからなのか、はたまた両方か。

よくないことをして、よくないよといわれた気分

 僕はアビー編をプレイしていて、間違いを父に指摘された思春期の少年のような気持になっていました。「復讐が良くないってことは嫌というほどわかりました。エリーがやっていることはまずいってことも。でも仕方ない。ジョエルが殺されたんだから」と、言い訳するのに必死でした。ノーティドックが言いたいことはわからんでもないが認めたくないという感じ。敵の立場を知るというのが、この作品を理解するうえで重要なんだというのはわかりますが、ジョエルの殺され方が壮絶だったため認めたくないという感情にかられるのです。

この不快感はデザインされたものなのだなと感じました。ジョエルが行った結果から目を背けるなという聞きたくないメッセージ。おそらくこれは、受け入れられない人も出てくるなと思いました。特に、前作ラストオブアスをきれいな物語と受け取った人は。

あなたはいい人

 特に印象に残っているのは、命を救われたヤーラがアビーに「あなたはいい人」と言うシーンですね。アビーは「知らないくせに」と言いますが「十分知ってる」とヤーラは返します。

 その前にアビーはメルに今頃宗旨替えかと責められていました。オーウェンへの感情が混ざっているので複雑ですが、お前が今頃人助けか?お前は最低の人間だろうという趣旨のことを言われ、泣きべそ状態になっていました。プレイヤーはどちらかというとこちら側の意見かと思います。

 アビーはジョエルを拷問した糞野郎ですが、人助けをして変わろうとしている。ヤーラはアビーがジョエルを拷問した事実を知りませんが、見ず知らずの敵を助けようとして奮闘したことは知っている。物事には見る方向というものがあり、受ける印象は、立場で変わる。それはアビーだけではなく、ジョエルとエリーにも言えることだということを暗示しているのだなと思いました。

安易な言い訳を許さないまさかの展開の連続

 ところがそんなことを考える余裕すらなくなってきます。なんとアビーでエリーと戦うというまさかの展開が待っているのです。しかも前作のデイビット戦を連想するシチュエーション・・・「俺はアビーに復讐するエリーだったはずなのに、なぜかアビーとなりエリーを成敗しようとしている」もうめちゃくちゃです。はたから見たらエリーは狂った復讐者ということがアリアリと暗示されていて、もう訳が分からなくなる。このゲーム過去一番にやばい。しかもエリーめちゃくちゃ強い。少女が一人で組織と戦えるわけないだろという意見を打ち消すこともできるうまい展開だなとも思いました。

ボコボコにされ、しかも許されるエリー

 アビーにつかまりボコボコにされるエリー。腕を折られ、馬乗りで顔面を何度も殴られます。あまりにも容赦ない描写。見てられないのに目が離せない。そこにディーナが登場するもアッサリいなされ、顔面を強打され首を切られそうになります。そこでエリーがなんと「彼女は妊娠している」と命乞いをするのです。アビーの顔には「お前がそれを言うのか」と書いていました。

 アビーは「あっそう」と言い手を動かします。その瞬間、自分は「ディーナも死ぬのか」と覚悟しました。ところが、その予想も裏切られます。なんとレブがアビーを止めるのです。アビーは苦悶の表情を浮かべ、ナイフを捨てて、ディーナと、そしてエリーをも見逃します。

 自分は、何が正しくて、何が間違っているのか、だれが正しくて、どうすべきだったのか、よくわからなくなり、軽いパニック状態になりました。ただ、ディーナとエリーが殺されなくてよかったと思ったのは覚えています。

突然の平和とトミーと復讐と

 画面が突然変わり、そこには郊外で赤ちゃんと戯れるエリーが。エリーはディーナと暮らしているようで、抱いているのはディーナの子供っぽい。ディーナと腰を振ったりして幸せそうです。このシチュエーションは、道中で語っていた理想の生活というやつでは??

 まさか、まさかここで、この状態で終わってしまうのかと震えていると、エリーがジョエルのフラッシュバックで発狂し始めます。病気になっとる・・・そしてトミーが登場。僕も発狂します。トミー生きてた!!

 しかしトミーは人が変わっていました。マリアと距離を置くことにしたと報告し、なんとエリーにアビーの居場所を見つけたと言い出すのです。俺は戦えない、復讐するといっていたよなと発破をかけるトミー。マリアと疎遠になった理由が分かったよ・・・あの優しいトミーは復讐に焼かれて死んでしまったのだなと思ったら、死んだと思った時より悲しくなりました。

終わらせに行くエリー

 やっぱりというかなんというか、エリーはもう一度旅に出ます。いかないでと嘆願するディーナと、おいもちゃんを置いて・・・エリーは終わらせなきゃと言ってました。復讐をしたところで何も終わらない(むしろ不幸が始まる)ということをプレイヤーの自分はわかっているので複雑です。気持ちがぐしゃぐしゃになりつつどうなってしまうのか気になってしようがありません。

ラストバトル

 すったもんだあって、エリーはとらわれてはりつけにされているアビーを見つけます。エリーは二人を助けた後、レブにナイフを突きつけ「もう戦わない」と言うアビーに戦えと発破をかけます。幸せをすべて捨てボロボロで満身創痍のエリーと、がりがりにやせ細りながらもレブを守ろうとするアビーのラストバトルが始まります。

 見てられない!やめてくれと内心叫びながら、エリーでアビーを切り刻みます。こんなプレイしていて顔がゆがみそうになるラストバトルは初めてでした。ナイフを刺すとき□ボタンを連打するんですが、まるで自分がナイフを突きつけているように錯覚します。

 ラストは本当に衝撃的でした、エリーがとどめを刺そうとするその瞬間、エリーは苦悶の表情から涙を流し、ジョエルが浮かび、なんとエリーはアビーを逃がすのです。自分は心底驚きました。そして、正直に言いますが、こう思いました「本当に逃がしていいのか。もう会えないかもしれないぞ。逃がすんだったら、そもそもなんのためにここまで来たんだ」と。

すべてを失ったエリー

 エリーはジャクソン郊外に帰ってきますが、もぬけの殻。指の傷から数か月、下手したら1年以上経過してるっぽいです。エリーの部屋はそのままにされていて、ギターを引こうとしますが指がなくなってうまく弾けません。ギターはジョエルとの思い出ですから、ジョエルとの決別(まさにラストオブアス)を暗示しています。悲しいすぎる。

 ここで、この物語の核心となる回想が表示されます。ジョエルとエリーが最後に話した日のシーン。ジョエルがエリーに嘘をついたことをエリーは責めます。それに対してジョエルは「神様がもう一度やり直すチャンスをくれても俺は同じことをする」と、エリーへの強い思いを伝えます。

 エリーは「一生許せないと思う。でも許したいとは思っている」と返しました。この言葉を聞いてハンマーで殴られたようにガツンと来ました。エリーからすればアビーは一生許せない相手です、それを逃がしたということは、それでも許そうと思ったということでしょう。上のセリフはジョエルに対してですが、アビーとのラストに重なります。

 ジョエルは前作でエゴを貫きました。エリーを救うためにファイアフライを壊滅させ、ワクチンの望みを絶ち、エリーに嘘をつきます。その結果復讐されてしまうわけですが、このジョエルの行動を肯定したいと思うのであれば、その報いを含めて許そうとする決意が必要なのかと思います。

絶対に許せないと思わせ、それでも許そうと思えるかを問う驚愕のシナリオ

 このゲームは、キャラクターだけではなく、プレイヤーにもアビーを絶対に許せないと思わせます。そしてそのうえで、それでも許そうと思えるかを問うのです。許せないと言い続ける人もいるでしょうが、もしここで、アビーを許そうと思うことができないのであれば、前作でジョエルが行った行為を、たとえそれがエリーを思う気持ちゆえであっても、肯定することができないということになるのではないでしょうか。

 そういう意味では、本作は前作とつながっていて、ジョエルの行動の負の側面を強烈に描く作品なのだなと思いました。