惡の華8巻感想

悪の華8巻を購入し読みました。すごいおもしろいですね。この本は序盤気持ち悪くて投げ出したくなるかもしれないですが、最後まで読むべきだと思いました。
ここ最近は漫画自体をあまり買っていなくて、コミックを何度も読み返したのは、げんしけん13巻以来な気がします。
以下、ネタバレ全開の感想。



8話は大きく分けて2パートに分かれます。常盤さんの彼氏に嫌がらせされるも、結果として常盤さんと仲良くなっちゃうパートと、佐伯さんにお説教されるパートです。どちらも見ごたえ十分でした。


序盤〜常盤さんパート

自分の作品を見せるために、常盤さんは春日君を部屋に招きます。それを彼氏に発見され、春日君ごと溜まり場へ連行されるところから物語がスタートします。
彼氏は春日君が常盤さんの部屋にいたことを気に食わないようで、執拗に嫌がらせをしてきます。表面上は気にしてないそぶりをしながら。
たまにいますね。この場にそぐわない人を無理やり連れてきて、無理やりテンションあわせようとさせて、それができないと責めたててくる人。大人でもいっぱいいます。要は気に食わないのです。
彼氏は執拗に嫌がらせを行い、しまいには、中学生に好きだった子を言えとか言い出します。常盤さんに似ている子だろ〜とか言い出します。
キョドリながらも話を合わそうとしていた春日君もこれには下を向き、手には血管が浮かぶ事態に。
中学2年の出来事は今の春日君にとって逆鱗なのです。いつブチ切れしてもおかしくない状況…そこでなんと


常盤「ちょっと!!…もういいでしょ?おもしろくないよ。やめればもう?」


なんと、常盤さんが仲裁に入ります。そして、彼氏と常盤さんが衝突し大変気まずい空気になります。
自分は、過去にこれと同じようなシーンを見たことがあります。ターゲットは仲村さんで、かばったのは春日君ですが。


その後、帰りに常盤さんとばったりあう春日君。(帰りに道で常盤さんが待っていたのだと思う)
春日君は、常盤さんにかばってくれてありがとうとお礼を言い、なぜ自分を部屋に入れたのかを聞きます。
常盤さんは、自分は本が好きであること、そしてそれを周りの人は理解してくれないであろうことを述べました。それはつまり「春日君はそうではないから入れた」ということですね。
そして「私は無理をしているのかもしれない」とぼやいたのです。
彼女の言ったことを要約すると「あなたは私にとって特別で一緒にいるのが自然に感じられる存在です」ということになります。
自分は過去にこれと同じようなシーンを何度か見たことがあります。



過去の春日君は「あなたは私にとって特別な存在だ」とアプローチを受けた時、何をしたでしょうか。
行動を起こさず、ひたすら逃げ回っていたのではないでしょうか。
その結果、佐伯さんは嫉妬に狂い、仲村さんとも心中未遂のようなことをおこし、トラウマに近い思い出を抱えることになってしまいました。


しかし、今回の春日君は少し違いました。
常盤さんの横顔を見て仲村さんを連想したのでしょうか。こぶしを握り締め、常盤さんとのつながりである「本を借りる」という行為をやめようと思ったこと、
でもやっぱり「本を借り続けたいこと」そして「小説を読みたいこと」を伝えました。これは「あなたとの関係を断ち切りたくない」という宣言です。
1〜7話の春日君を見ていた読者としては、グッとくる展開ではないでしょうか。


○終盤〜佐伯さんパート

その後、春日君は常盤さんと本のやり取りを続けていき、常盤さん作の小説を通じて関係が進展していきます。
二人っきりで話をしながら、常盤さんが作った本の内容を確認するというものです。
自分は過去にこれと同じようなシーンを見たことがあります。相手は仲村さんで、行っていた行為は決して褒められるものではなかったですが。


2人誰もいないところで会い、お互いが好意を寄せあっているのは明らかなのに、それを表に出さず、何らかの行為にふける…
以前は仲村さんとでした。そしてこの後、2人は焼身自殺未遂に走ってしまいます。なぜ2人はこんな方向に向かってしまったのか。
そして、常盤さんとの関係も、同じようなことにはならないまでも、きっと、このままではうまくいかないのでは・・・と思わずにはいられません。


さて、そんな状況で春日君は佐伯さんと再び出会います。
佐伯さんは新しい彼氏と新しい生活を行っているようで、どこか開き直った女らしさを醸し出していました。
下を向いてテンパってしまう春日君と対照的に、過去に何かあったという事をまったく表に出さず、さりげなく番号を交換し去っていきます。さすがWeタイプ女王様。
その後、再び会おうというメールをもらい、その過去を連想させる白々しい内容にブチ切れしつつも、結局流されて会うことになります。


待ち合わせた2人は喫茶店でとりとめのない話をしながら飯を食います。まったくそぶりを見せない佐伯さんに対し、春日君は終始キョドっています。
すると突然、タイミングを計っていたかのように「仲村さんとはあれからどうなったの」と話題を振られます。そして会っていないことがわかると、露骨にブッチギレします。


佐伯「なんで?」


まず、自分は「佐伯さんは春日君にまったく未練がない」と考えています。
理由は、佐伯さんにとって春日君が好きだというのは建前だったと自分は考えているからです。
あくまで春日君と仲村さんとの間を引き裂くのが目的だと考えないと、妙な違和感が出てきます。
ターゲットはあくまで仲村で、佐伯さんは仲村さんに負けてしまったというのが自分の認識です。。
(ただ、子供のころのどから手が出るほど奪いたかった「春日」という像は、佐伯さんの嗜好に影響を及ぼしている可能性はある)
そう考えると、佐伯さんが気になるのは「春日」ではなく「仲村」のはずです。そのような視点で見ていくと、佐伯さんの行動は無駄がなくすさまじいです。
「あの時私を打ち負かした仲村と会ってないとはどういうことだ」と。「あのときあれだけのきずなを見せつけておきながら会ってないとはどういうことだ」と。大変お怒りです。


佐伯さんはラッシュを仕掛けてきます。
「なぜ会わない?夏祭りのとき、仲村さんはなぜ春日君を突き放したのか、わからないのか」という趣旨のことを言ってきます。強烈です。
なぜあの時、仲村さんは春日君を突き飛ばしたのか…これはとても重要なことだと思います。


自分は、仲村さんが春日君のことを想っていたのはまず間違いないと考えています。そしてそう考えることで春日君を突き放した理由も見えてきます。
あのまま火をつければ、仲村さんと春日君は2人好意を寄せたまま、永遠に、見たくない現実から逃避することができたのです。
しかし、それは仲村さんの本当に求めていたものとは違ったのではないでしょうか。自分は「仲村さんは本当のところ春日君と仲良くなりたかっただけ」だと思います。
だから。このままでは春日君が死んでしまうので、最後の最後で仲村さんは春日君の為に大嫌いな現実を見て、それができない春日君の代わりに現実的な行動をとった…
つまり、春日君を突き放し、一人責任をとろうとしたのではないか、と自分は考えます。
仲村さんはめちゃくちゃなことをけしかけておきながら、その実、春日君が現実的に2人の関係を認めてくれることを期待していたのではないかと思うのです。
そう考えると、佐伯さんがこの話をした理由は明白です。警告しているのです。
また、同じことを繰り返すのかと。あの時、仲村さんの気持ちに気づいていながら、気づかないふりをし、自分の本当の気持ちを偽って、変態に没頭した結果どうなったのだと。


佐伯さんのラッシュは続きます。
「常盤さんだっけ?仲村さんに似ているよね?仲村さんの代わり?」
対する春日君は、彼女の本がどうとか、得意の言い訳をします。ところが、


佐伯「うそつき」


ばっさりと切られます。
自分も春日君は嘘をついたと思います。過去にこれと似たようなシーンも見たことがあります。


佐伯「あの子も不幸にするの?あの子も自分の慰めの道具にするの?卑怯者」
春日「違う」
佐伯「でもそうなるよ?あの子は仲村さんじゃない」
佐伯「本当の仲村さんのことはどうでもいいんだね。ずっと逃げ続けてきたんだね。うっすらとわかっていたけど悲しかった」
春日「」


佐伯さんがなぜこの場を設けたのか、そして春日君にかけた強烈な言葉の意味は明白です。
佐伯さんは春日君を励ましたのです。群馬から離れた大宮の地で、仲村さんと似ている仲村さんとは違う女性と歩いていた春日君を見て、
また同じことを繰り返すと察し、警告したのです。このままではまた同じことを繰り返すぞと。逃げるなと。
自分を打ち負かした仲村さんへの思いがそんなもんだったのかとがっかりしつつも、それが現実かとうけいれつつもです。
このシーンで、自分の佐伯さんに対する好感度が跳ね上がりました。しかし、もう会うことも無いのではないでしょうか。
なぜなら、彼女の目的は果たされたからです。


ここからの見どころは、当然春日君がどう出るかです。それは、常盤さんへの行動もそうですが、めちゃくちゃになった春日家の修復も考えてほしいと思います。
自分も実家の関係がめちゃくちゃになったことがあります。しかし今はいい感じです。彼次第で壊れた関係も修復できると思わざるを得ません。